「バスあいのり3丁目TERRACE」から見えたグリーンインフラの可能性 第1回グリーンインフラ大賞 優秀賞受賞記念
東邦レオ株式会社 グリーンデベロップメント事業部 原田宏美
2020年9月 新宿三丁目の路地裏に明るく爽やかなオープンスペースが生まれました。
“新宿の真ん中で、日本の食を” のコンセプトの下、「バスあいのり3丁目TERRACE」という名前が示す通り、ここでは「産地直送バスあいのり便」に乗って到着した、新鮮で珍しい食材や飲料によるメニューが提供され、生産者と消費者がダイレクトにつながる食のプラットフォームとなっています。また、デジタルサイネージを通じた生産者との交流や新宿の生の文化に触れる場としても魅力を発揮しており、これらの企画にも注目が集まっています。
そしてこの度、「バスあいのり3丁目TERRACE」は、栄えある第1回グリーンインフラ大賞の都市空間部門において優秀賞を受賞いたしました。都会の小さなスペースが、グリーンインフラにどのように関わり、どのような評価をされたのか。受賞に至った理由についてひも解いてみたいと思います。
まず、この場所におけるグリーンインフラについて数値的な側面からご紹介します。
緑被率と雨水の浸透量において、その効果が実際に発揮されています。緑被率は外構緑化の規定20%を大きく上回る30%が確保され、サーモカメラ測定(2020年8月4日)においては、コンクリート道路と樹木付近では15℃近くの差が生じており、温熱環境の改善効果が確認できました。
また、75坪の敷地全体が雨水浸透基盤であり、更に敷地の30%が根系誘導基盤の入った植栽エリアとなっています。この雨水の浸透が良好な基盤では、時間降雨50mmの場合において約12.4トンの水を地下にしみこませることが可能です。
さらに、時間降雨強度100mmの場合であっても雨水の流出がないことから雨水流出抑制効果に大きく役立っています。
立地においては、利便性の良い場所でありながらも路地裏にあたるため、未利用のままにしておくと無断駐車や夜間照明の少なさから治安面での不安や課題のある場所でした。それが一転して、現在はデジタルの技術を活用した、オンラインでもリアルでもつながれるサステナブルな都会のオアシスとなったことで、安全性向上と共に空間の魅力度アップに貢献しています。
このように「バスあいのり3丁目TERRACE」では、未利用地という空間の利活用、グリーンインフラによる快適な環境づくり、新宿という街の文化や地方との交流といったソフトコンテンツが上手く融合されたことで、エリアの価値や街のブランドを高めることができました。
これらを通じて言えるのは、グリーンインフラが文化の醸成や継承にも貢献しうるということです。グリーンインフラが多機能であるように、グリーンインフラを通じて多様に展開される文化的な側面にも今後ますますの可能性があると期待しています。
2021年4月27日
バスあいのり3丁目TERRACE
- ホームページ
- http://www.ainoribin.com/3chometerrace/
- 企画・運営
- 株式会社アップクオリティ
三菱地所株式会社 - 設計・施工&運営サポート
- 東邦レオ株式会社
株式会社NIWA - 所在地
- 東京都新宿区新宿3三丁目16番先
グリーンインフラ大賞について
グリーンインフラに関する優れた取組事例を表彰し、広く情報発信することを目的に、令和2年度に創設された表彰制度。
応募総数117件の取組事例の中から、会員投票等により5件の大賞(国土交通大臣賞)と17件の優秀賞が決定しました。
4部門のうちの都市空間部門において「バスあいのり3丁目TERRACE」は優秀賞を受賞。
グリーンインフラ大賞を主催する「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」は、多様な主体の積極的な参画及び官民連携により、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用したグリーンインフラを推進し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりにつなげることを目的とするプラットフォームです。
国、地方公共団体、民間企業、大学・研究機関など、多様な主体が参画しています。
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