グリーンインフラとは

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「グリーンインフラ」の時代へ (その6)

グリーンインフラ総研 代表 木田幸男
理学博士 技術士(都市及び地方計画)樹木医

「グレーインフラ」プラス「グリーン」の時代へ

雨水は「いかに早く流し去るか」に注力して対策が講じられてきました。そのためには大規模な雨水処理施設が地下に建設される必要があり、これを海外ではグレーインフラと呼んでいます。20年ほど前に登場したグリーンインフラと区別して使われている言葉です。

日本では「グレーインフラ」に反発する人が多いです。「グリーン」に比べて、イメージが悪いからです。しかし厳然としてグレーインフラ事業は進められています。最近、東京都から大型の地下調整池整備事業が発注される記事を読みました。合計の雨水対策量は約44万トンで費用は140億円。世田谷区の環七道路下にある巨大トンネルの雨水貯留量が54万トンなので、ほぼそれに匹敵する規模です。都市型集中豪雨で1時間雨量100mmが現実のものになってきた今、このグレーインフラの整備は緊急課題であり、よく理解できます。しかし、そろそろ日本も海外の先進事例に習い、グレーにグリーンをプラスしたハイブリッド方式の都市整備を進めていく時期だと思います。

「雨水の浸透と表面流出」屋上世界会議名古屋大会 2015 Steven Peck「雨水の浸透と表面流出」屋上世界会議名古屋大会 2015 Steven Peck 

屋上緑化は新しい雨水貯留施設

昨年の世界屋上緑化会議名古屋大会でペック会長は、屋上緑化を雨水貯留施設として活用することを呼びかけました。降雨の約50%が地下に浸透していた自然状態の原野に対して、地表面がアスファルトやコンクリートで覆われることで15%しか地下に浸透されなくなりました(図を参照)。それらの表面流出水は合流式下水道施設に集められ、許容量を超えた雨水は内水氾濫を起こして都市内に溢れます。それを屋上緑化で貯留し遅延させて流出させることができれば、大きな下水道への負担軽減につながります。

日本の屋上庭園の施工面積は433.8haに達しました(国土交通省資料より)。仮にm2当たり20リットルの貯留量があるとすれば、単純に86,000m3もの雨水を一時貯留できる計算になります。しかし、日本ではそれを認めていません。一日も早く屋上をグリーンインフラの好適地に認めるべきと思います。

うまく使えば、半額になるグリーンインフラ

これまで建築構造物の周辺は、雨水対策として浸透トレンチや浸透側溝などの手法で雨水浸透対策が行われてきました。これを仮にグリーンインフラで行った場合、同じ雨水対策量を半額の予算で実現する方法があります。

浸透適地において、芝生下に仮に雨水貯留浸透基盤材を20cm敷きこむと、芝生の雨水対策量(50L/m2)の約4倍以上のカウントが可能となります。これを従来の浸透トレンチ工法と比較した場合、費用は半額以下となることが分かりました。この手法を植栽帯の下層に応用した場合、良好な植栽基盤の確保と同時に雨水対策が可能になり、合理的な雨水対策工法を実現できます。これまで建築物単体で考えてきた雨水対策を敷地全体で対応すれば、大きく経済合理性を生みだすことが可能になるのです。

健康に優しいグリーンインフラ

人間の福祉の改善について Vivek Shandas人間の福祉の改善について Vivek Shandas 

ポートランド州立大学のシャンダス教授によれば、グリーンインフラが近隣に存在するか、しないかで、母親と子供の健康に対して大きく影響を及ぼすということです。喘息などの慢性呼吸器疾患の頻度や程度に対しても大きな差があるといいます。また、重大な犯罪に関しても、グリーンインフラのない近隣では頻度が高くなるという結果でした。グリーンインフラの導入は生活に直結したメリットが多く、社会の価値を上げることが大いに期待できます。

日本では緑と健康の関係を定量的に評価した研究はまだ少ないです。これをもっと進めることで、グリーンインフラの導入を必然にできます。雨水との関係だけでなく、生活に密着したテーマでの定量評価も進めていきたいと考えています。

活用する水は「あまみず」と読ませる

2011年に刊行された日本建築学会環境基準(AIJES)で「雨水活用(あまみずかつよう)」という言葉が定義されました。活用する水を「あまみず」と読み、雨水(うすい)や汚水の「厄介者としての水」と一線を画しています。今後雨水活用が災害対策の一環となる中で、呼び方にも注目が集まることを期待したいです。

環境革命の時代

造園家の涌井史郎氏は、今を「環境革命の時代」と定義し、コンパクトシティーの推進を提唱しています。環境に負荷をかけない住まい方、自己実現を可能にする新しいライフスタイルの追求が進む中で、日本におけるグリーンインフラの普及は待ったなしといえます。雨水対策と同時に防災対策にもなるグリーンインフラを支える日本版の技術開発が、新たな環境革命の時代を切り開く原動力になるものと信じています。